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コミュニティ形成ツールとしてのセミハード

芝浦工業大学 教授 作山康

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 これまでの工学的アプローチによる外科的といえるまちづくりは近年少しずつ形を変えつつある。パークレットなどアメリカなどで一世風靡しているタクティカル・アーバニズム(戦術的アーバニズム)の実践は、日本においてもまちづくりの手法の主流になりつつあるのではないかという勢いである。

 さて、いわゆる第3セクターは、全国で一時不要論なども叫ばれ解散されたものも多いが、武蔵野市の開発公社は自治体の補助金に頼らず、自立した企業経営によりまちの賑わい創出に活かす資金を生み出す不動産管理という立派な使命を有するだけでなく、「セミハード」という新しい領域の造語まで作って、攻めのタクティカル・アーバニズム、あるいは広い意味ではプレイスメイキングを実現しつつある。一般的な事例は公共空間(特に道路のような行政財産)の活用事例が多いが、武蔵野市開発公社は、保有する不動産で低未利用空間活用を実践しつつ、公的性格を生かしてそのノウハウをまち場に広げていくことなど、実践と理論構築を通じたまちづくりに取り組んでいる点に特徴がある。

 革新的な都市デザインを行なっているスウェーデンの政府系イノベーションエージェンシーがストリートのデザイン原則を発表しているが、そこには空間や仕掛けなどの技術的要素はない。

例えば「建築家ではなく庭師のように考える」「未完成=肥沃」「人々がお互い見つめ合える場所を作る」「若者や老人の受け入れる場所は他の人々に愛される」「互いに自慢し合える場所を作る」「共有されたパブリックスペースはコミュニティのるつぼ」などがある(抜粋したもので他にもある)。

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2019大宮ストリートテラス こどもも大人もゲームカフェ

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こどもも大人もゲームカフェで使用した「折りたたみ屋台」

 パラソルベンチや屋台などは恒久的な工作物(ハード) とは言えない可動式の装置は、人々が街を楽しむための演出装置ではあるが、使い方によってはさまざまな機能や効果を表す。店舗や道路のストリートファニチャーとは異なり、営業目的や行政の市民サービスといった社会にとって必要不可欠な機能というものではないが、生活の豊かさや市民の誇りにつながるコミュニティ形成ツールとも言える。店主と利用客、あるいは利用同士が出会い会話をし、そのような場と機会がさらに多くの人を惹きつけて愛される場やさらにエリアへと拡大していく。

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​まちからベンチ

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まちからべンチ(商品展示台)

 一方、武蔵野市開発公社が開発した「まちからベンチ」は特定の場所に定着したものだが、それ自体が変形機構を有している。ポップアップストア時には商品展示什器としてまちの賑わい創出に一役買うが、普段はベンチとしてまち中の憩い場として機能する。これは単に使われていないパブリック空間を有効という管理者サイドの理屈ではなく、純粋に市民が触れ合い見つめ合い、楽しい生活を送るための都市の気遣いなのである。そのためハード的な装置であっても目的はあくまでもソフトであることからセミハードと表現しているかもしれない。Withコロナの時代を迎えつつある中で、益々人と人との触れ合いとコミュニティ形成が重要となり、そのためのさまざまな仕掛け(装置)が必要となる。あまりに商業的色合いを感じたりせず、しかも赤字にならない適度な利益で運用できるのが理想で、その努力を利用者も感じ感謝して愛される場所・機会となるのであろう。

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芝浦工業大学システム理工学部環境システム学科 教授 / 技術士

作山 康 Sakuyama Yasushi

 

■経歴

 芝浦工業大学工学部建築工学科卒(1983年)

 民間都市計画プランナーとして( 1983-2010)、各地の都市計画の調査・計画・設計等を経験。広域的な都市計画から、ワークシヨップによる公園計画・設計・マネジメント企画などの虫の眼都市計画まで、実践的な都市計画を立案・実施してきた。 

東京都市圏では、業務核都市付近のやや元気のある都市や普通の都市に多く関わってきた。

■ 講師・委員・アドバイザー・コーディネーター等

 さいたま市環境審議会会長 

 桶川市都市計画審議会委員長

 吉川市都市計画審議会委員長

 戸田市景観アドバイザー

 武蔵野市まちづくり委員会委員長

 

■ 著書・論文等

 「条例による総合的なまちづくり」共著、学芸出版社、2002年12月

 「日本の都市環境デザイン」北海道・東北・関東編 小江戸担当、造景双書、2003年11月

 「小規模区画整理のすすめ」共著、学芸出版社、2004年12月

 「アーバンデザインセンター」共著、理工図書、20012年9月

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